「マンホールペインティング」 ある日、銅鏡について書かれている本を読みました。 おそらく宗教上に用いられたであろうその造形は、私にはマンホールにしかみえませんでした。 そして、「もしかしたら、人間はその時代に要請された意図や用途を越えて、 繰り返し似たような造形物をつくり、生活の中に取り入れるのではないか」と想像し、 「銅鏡とマンホールは共に、都市の表と裏を繋ぐ異界の徴(しるし)」なのではないか、 と考え至るようになりました。 また、そういう視点で街にでてみると、マンホール(異界の徴)の数は思った以上に多く、 線で結べば何かの像にみえてくる、夜空に煌めく星々―星座を想起させました。 私はマンホールペインティング・シリーズという絵画作品で、 京都という古い都市の持つ独自の場所性(トポス)を感じ取り、 無尽蔵に「物語」を産み出せることができる 可能性を提示したい。 マンホールというひとつの造形物をつかって、都市あるいは人間の履歴を自由に 読み解こうという試みです。 *自分の活動の中の位置づけ 私はこれまで約10年間、都市と人間の関係について、 もっと言えば人間のつくった環境と、それにより不自由になった肉体について考え、 表現してきました。 そういった意味では、狭義の「絵画」作品ではなく、 「建築」に近いアプローチだったのかもしれません。 大学時代に過ごした東京という比較的新しく驚くほど表層的な都市では、 表層的なコミュニケーションから逃れるような作品を多くつくっていました。 2001年 短期滞在したベルリンでは、壁のあった場所を巡り 簡易的な建築物をつくって設置し、 かつて東西どちらにも属さなかった場所にベルリンに住む人々に入ってもらう、という 作品を発表しました。 京都に住むようになった2006年からは、非常に古い歴史を持つこの都市の力、 歴史の積み重ね(履歴)に圧倒され、次第にその驚きを糧に作品をつくるようになっていきました。 マンホールペインティングは、これまでの作品を経て、 この都市―京都に住んで獲得した、ある1つの視点を初めて提示する作品になります。
by taishi_tomi
| 2010-07-10 23:08
| テクスト text
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