アトリエの蔵書整理のついでに 少しまとまって読書。 最近は読みたい本は絶版が多いので、図書館利用ばかり。 だから、いま手もとにあるのはほとんど大学時代に読んでいた本達。 でも、根本的な「ものを考える枠組み」はその時にほぼできあがったので、 本棚を眺めているだけで自分の頭の中が可視化されているみたいで とても面白い。 * ● 松岡正剛『連塾 方法日本1』 『連塾 方法日本2』を読む。 これは最近購入。 大学時代は松岡さんや内田繁さんの講義を受けに 大学の授業をよくサボッてた(笑)。 千夜千冊の試みなんてとても面白いし、 ご自身をうまく「キャラ立ち」させているスタンスや、 多くの肯定的な発言も、フットワーク軽くて心地良い。勇気づけられる。 ボクはリアルタイムじゃないけど、雑誌『遊』の試みなんて今からみても面白いし、 こんな手間をかけた雑誌は他に見当たらない。 正剛さんの本はイイ意味で横滑りしていく。 「本」という存在が、混沌とした世界 という「海」に対しての 言葉や図によるマッピング=「錨」だとすると、 その錨から錨へとどんどん移行していく、ネットサーフィンする、 脳細胞の網を紡ぎだし創りつつ、その網を遊泳する「目」みたい。 またはその目の遊泳「方法」を毎回提示されている気がする。 この本は、日本の文化のコアは一体何なのか? ということを論じている本なんやけど、 ボクが1番気になったのは、「言語翻訳コスト」について。 どの言語が覇権を握るかによって、そうではない国や民族がかける翻訳コストというのが ものすごくバカにならない(『連塾 方法日本2』P99) 通貨や製品と同じように言語も常に戦争している、という指摘。 ex.アイルランド語は英語に殺された・・ 現代はアメリカの言語=英語が覇権を握ってるけれど 英語は、少数の者が使っている英語ではない他の言語をどんどん駆逐していく。 そして風習が消え、思考(嗜好)が変わり、リズムがなくなっていく・・。 (英語の覇権は近代以降の本当にごく最近の現象) ● 柄谷行人『近代日本の批評1〜3』を読み返す。懐かしい。 中国が宗主国であったという意識はなかったけれども、中国文化圏というか、 そういうユニヴァースに自分たちがいるという意識は、漱石にしてもあるんですね。 日清戦争でそれが消える。 (中略)しかし、漱石や天心にとっては、それはユニヴァーサリティの崩壊を意味した。 漱石が西洋文学の普遍性を疑ったとき、持ち出してくるのは、日本文学ではなくて 漢文学です。むろん、漱石はどちらが普遍的だとは考えない。そこで「科学」に行く、 あるいは「理論」に行く。(『近代日本の批評3』P108) 言語の覇権といえば アヘン戦争-日清戦争前後までは、日本は中国文化圏という意識が強かった。 そもそも日本の文字はすべて漢字から派生したものだし、切り離せないもの。 つまり(特に聖徳太子の時代から)ずっと、日本では中国語が覇権を握っていた。 けれども中国の失墜で、植民地になる危機から、中国文化ではなく西欧の文化を 吸収・消化せざるをえなかった。 このとき、よって立っていたスタンダード(=中国)がなくなってしまった。 切り離してしまった。 福沢が『脱亜論』を書いたのは、朝鮮に対する絶望みたいなものですね。 つまり、福沢も、朝鮮や中国にがんばってほしかったのです。 (『近代日本の批評3』P109) 江戸時代までは中国文化があり、それに対しての日本文化というものがあった。 スタンダード(=中国)がなくなる危機感をひしひしと感じていた 夏目漱石は「理論」へ。 正岡子規は「写生」へ。 必死に追究していく。 よって立つものから切れてしまって、 じゃあ今は、英語(アメリカ)がスタンダードか? といえば どうなんやろうか? 個人の実感としてはまったく違う気がするけど ひとまず留保。 読書日記 2 へつづく
by taishi_tomi
| 2010-02-08 15:34
| テクスト text
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